【高校野球】34年越しの宿命対決 智弁学園・近藤大輝が紡いだ赤きユニフォームの軌跡
34年前に父が敗れた天理高校との因縁対決に挑んだ智弁学園・近藤大輝。赤いユニフォームに込めたリベンジの軌跡と、プロ野球へ続く新たな挑戦を描く。
赤きユニフォームに刻まれた二世代の闘志
9回表2死満塁 球場に響き渡る智弁応援団の『ジョックロック』。バッターボックスでグリップを締める近藤大輝(3年)の瞳に、34年前の決戦映像が重なる。1991年夏、父・仁氏が着た高田商のユニフォームと、今自分が身にまとう真紅の戦袍。
父が遺した「無念のスパイク」
自宅の神棚には、甲子園の土を掴めなかった父の金属バットが供えられている。毎朝の素振り前、必ず手を合わせる儀式。「あの日、父さんが感じた悔しさを背負って立つ」。天理戦前夜、仁氏は息子に当時のスコアブックを手渡した。9回裏2アウトから流れた運命のフォークボールが、三振の墨で塗りつぶされていた。
魔曲が導く攻撃の美学
智弁流「ジョックロック」の秘密練習が明らかに:
- 午前5時からの暗黙の自主練
- スイング速度測定器を使った角度調整
- 天理投手陣の癖を分析したAIシミュレーション
7回裏の二塁打は、父から受け継いだ「外角低め攻略術」が炸裂。スタンドで拳を振り上げる仁氏の指先に、消えかけていたマメが光る。
宿命の9回・時空を超えるバット
最終回、1点差の攻防。近藤が握ったバットは父の形見と同じミズノプロモデル。マウンド上の天理エース・西村が投じた137km/hのシュートが、34年の時を超えて仁氏のバットと重なる。
「ガキン!」
打球はファウルポール直撃を狙う鋭いライナーに。しかし重力に引きずられ、グラウンドへ叩きつけられる。父が天を仰いだ角度と同じ38度の太陽が、悔恨の汗を照らした。
新たな章へ:プロ野球という決戦
ユニフォームの背番号「7」を畳みながら、大輝は呟く。「この赤はまだ褪せてない」。NPBスカウトが記録した最速打球速度118km/hのデータが、新たな戦いの始まりを告げる。父と子の物語は、今やグラウンドの外へ――。
<主要データ>
- 近藤大輝 通算打率.412
- 天理高校 夏の奈良大会連覇記録更新(7年連続)
- ジョックロック演奏回数:今大会計38回

